音楽史の中のハイドン 6 当時の難解な音楽その22- 25

6.当時の難解な音楽
 (その22)音楽の分類の仕方には、2種類ある。ひとつは、ドイツ語でいうところのErnestーMusik 「まじめ音楽と、Unterhaltug Musik 「娯楽音楽」である。19世紀にに、最もよく売れたのは現代音楽で、それも、まじめ前衛音楽の方でなく、新しく作られた娯楽音楽であった。19世紀の楽譜出版物を少し精査してもすぐにわかるのは、おびただしい量の「捨てられた」音楽の存在である。歴史は統計的に見る必要がある。それをくぐり抜けた「価値あるもの」に眼をむけるべきだといわれる。なぜなら、さもないと、19世紀に最も好まれていた音楽はワルツなどということにもなる。しかしこの議論は、全く説得力はない。ここで「価値あるもの」とされているものは、そのような評価が定まっているという意味に過ぎない。何が価値のあるかについては、私たちが、後世に改めて判断をする。となれば過去の現実に、眼を塞ぎ、既に「名曲」とか、「大作曲家」という評価を得ている音楽だけについて、議論することは、音楽史の研究課題とは限らない。
(その23) 「まじめ音楽」でも、極め付きに難解なものから、限りなく「娯楽音楽」に近いものまで大きな幅があった。19世紀のコンサートのの実態がその例である。メンデルスゾーン(1809-47)のシンフォニーなどは、難解な音楽の典型で、おいそれとは演奏されなかった。(演奏時間が長く、迷路を彷徨うものであった。)それにひきかえ序曲を演奏する機会は頻繁であった。序曲はシンフォニーの縮小版、一般向け版であり、標題をを持っていて分かりやすい。
  18世紀前半の人々は、ベートーヴェンの作品を十分に消化していないことが分かる。演奏され続けたのは、ごく限られたレパートリーでしかなかった。作品101のソナタを1843年にクララ シューマンが演奏した。このとき彼女は、父親にあてた手紙の中で、「この曲はまだ、公開で演奏されたことがないと思います。」と書いている。ベートーヴェンの第5ピアノ協奏曲は19世紀の後半に、このジャンルで、最も演奏される作品のひとつになる。しかし、この作品のスコアは、1857年に出版された背景もあった。

(その24) クララ シューマンはベートーヴェン演奏家のパイオニアであった。夫の死後、彼女は、ようやく、安楽になり、その頃から毎年イギリス演奏旅行をする。やがて1872年に設立されたフランクフルト音楽院の院長ラフに招聘されて、教鞭をとりバッハ、ベートーヴェン、ブラームスなどの音楽を中心に教えた。
 当時の音楽学校は、裕福な市民の子弟が学んでいた。ピアノという楽器を習うのは、当時も圧倒的に女性が多かった。それに対して、男性は、ヴァイオリンを学んだ。その前の18世紀においては、収入を上げるという観点だけから音楽家の職業を選ぶとすれば、男は、カストラートになるか、ヴァイオリンの名手になるかのどちらかであった。チェンバロ奏者になるのは、おおむね、あまり優秀でない音楽家であった。18世紀の終わりに、ピアニストとして生活が成り立つかどうかは、まだ分からなかった。そのため、ピアノを習うのは、そして生活に心配がない、上流階級の女性たちである。モーツァルトののピアノの弟子たちは、ほとんど全員が女性であった。唯一の男性がフンメルであったとされる。
 (その25)また、作曲家たちが、ソナタを書いて捧げる相手は、みな女性であった。それに対して弦楽四重奏曲は、男性のパトロンに捧げられる。19世紀になっても、ピアノは女性の楽器という伝統が続いた。オーケストラメンバーが全員男性というのも、こうした伝統の背景がある。
 音楽学校の設立目的は、初めからはっきりしていた。フランスでもドイツでも音楽学校に求められたのは、宮廷楽団に、そして後には、国立や私立のオーケストラに奏者を絶えず供給することであった。楽器の奏者の養成だけでは、音楽学校の経営は成り立たなかった。家庭楽器の極めつけであるピアノを学ぶ。ブルジョア階級の奥様予備軍の大量の女性たちが、音楽学校、大学教授、弁護士、経営者といった社会的地位の高い人物となって、こうした音楽的要素のあるインテリたちとなった。こうした人たちが、コンサート協会、合唱協会を支え、聴衆として彼らの娘たちも、また、音楽学校でピアノを学び、同じことが繰りかえされる。このようにして19世紀ヨーロッパ市民音楽文化が形成されていった。そして、彼女たちが学んだのは、バッハの平均律ピアノ曲集であり、ベートーヴェンのソナタであった。
 こうして、音楽学校での教育レパートリーに載った作品がスタンダードなメンバーになっていく。これによって儲けるのは、バッハやベートーヴェンではなく、出版社であった。楽譜出版社が急成長を遂げた。
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